問題提起:
日々の業務に追われ、予算作成が後回しになっていませんか?経営に必要な予算がしっかりと立てられていないと、資金繰りが不透明になり、将来的な事業運営にリスクが生じる可能性があります。
記事を読んでわかること:
この記事では、経理の専門知識がなくても簡単に取り組める予算作成の3つの基本ステップを紹介し、企業の成長をサポートする予算作成の重要性を解説します。
記事を読むメリット:
予算作成の基本を学ぶことで、資金の見通しを立て、事業運営の安定を図ることができ、長期的な成長を実現するための経営判断がスムーズになります。また簡単な予算テンプレートのご紹介もあります。
なぜ予算作成が経営のカギを握るのか?
経営者や管理部門長として、日々の業務や事業拡大のための戦略に追われる中で、「予算作成は後回しにしてしまう」という方も少なくありません。しかし、予算は経営の「羅針盤」と言えます。経営資源の配分、費用の見積り、将来の計画を立てる上で、予算がなければ不安定な船出をするようなものです。
予算を作成することで、どれだけの利益を出すか、どれだけの資金を確保しておくべきか、またどれだけのコストがかかるかを見通せます。これは企業の成長や安定した運営に直結します。また、資金繰りが適切に管理できることで、突然の資金不足や支出過多といった経営リスクも回避できます。
経理の専門知識がなくても、基本的なステップを押さえれば、誰でも予算作成を実践できます。この記事では、経理経験がない方でもすぐに始められる予算作成の基本を解説します。
経営に必要な予算の基礎知識
経営者の視点で予算作成の重要性を理解することは、企業の成長を見据える上で欠かせません。事業を拡大するタイミング、または新しいプロジェクトを開始する際、しっかりとした予算がないと、資金不足や運転資金の見通しが甘くなる可能性があります。結果として、成長機会を逃すだけでなく、経営の継続自体が危ぶまれることもあります。
一方、管理部門長の視点では、予算作成は部門運営を円滑に進めるための道具です。予算を作成することで、資源を効率的に配分し、社員への指示や計画を立てやすくなります。予算があれば、必要な支出と無駄な支出を明確に区別でき、経営層に対しても数字を基に説明することができるため、意思決定がスムーズに進みます。
予算作成の基本ステップ:今すぐ実行できるシンプルなプロセス
では、具体的に予算作成にどのように取り組むべきか、基本的なステップを見ていきましょう。予算には様々な切り口で多くの分類が存在しますが、今回は予算と聞いて一般的にイメージするPL(損益計算書)予算に絞った形で簡単な3ステップに分けて解説します。
ステップ1: 売上の目標を立てる
まず最初に行うのは、売上の目標設定です。これは、事業計画や過去の実績を基にした現実的な目標であることが重要です。特に中小企業の場合、売上が大きく変動することもあるため、楽観的すぎない目標を立てることが成功の鍵となります。
過去の売上データを見返し、成長率や季節的な変動を考慮して予測を立てましょう。また、事業の拡大や新しいサービスの導入を予定している場合、その影響も見込んだ予測が必要です。無理のない範囲で、着実な成長を目指した売上目標を設定することが、次のステップにつながります。
ステップ2: 固定費と変動費をリストアップ
次に、固定費と変動費のリストアップを行います。固定費は、毎月必ず発生する費用です。例えば、家賃、人件費、光熱費などが含まれます。これらの費用は、売上が上がっても下がっても変わらずに発生するため、まずはこの項目を明確にしましょう。
一方、変動費は、売上や業務の規模によって変わる費用です。材料費や広告費、運送費などが該当します。変動費は予測が難しいため、慎重に見積もる必要があります。売上予測を基に、一定の割合で変動する費用を予測し、適切な予算を確保しておきましょう。最初の段階では過去実績の原価率をもとに予算を立ててみるのが分かりやすいかもしれません。
ステップ3: 利益をシミュレーションする
売上目標と費用の見積りができたら、次に行うのは利益のシミュレーションです。売上から固定費と変動費を差し引いた金額が利益となります。もしこの時点で赤字になりそうであれば、コストの見直しや売上目標の再設定が必要です。
この段階で重要なのは、現実的な数字を基にシミュレーションを行うことです。利益が出る計算であっても、リスクを考慮し、予備費を計上するなどの工夫をすることで、突然の支出や予測外の事態にも対応できるようになります。
予備費の考え方には賛否があります。利用の有無は会社の状況に併せて判断してください。ちなみにかの有名な稲盛和夫さんは、そもそも予算という言葉を嫌い、計画という言葉を使わせていたと言われています。
計画というのはあくまで計画を立てただけで、実際に使う時、それが本当に必要かもう一回吟味しなければならない。無駄金は一切使っちゃいかん。逆に、いったん計画で決めてもそれ以上に必要だと思ったら堂々と言ってくれ。予算で決まったお金はいただけるものとおまえたちは思っていたんだろう。だから計画と言ったんだ!
日経ビジネス、2018年6月27日 参照
このような内容から、恐らく稲盛さんは予備費には否定的な考えだったと推察されます。
予算作成を簡単にするテンプレートとツールの紹介
予算作成に取り組む際には、ツールを活用することで作業が格段に楽になります。例えば、Excelを使ってシンプルな予算表を作成することができます。セルに売上や費用の数字を入力するだけで、簡単に利益を計算できるテンプレートも多く存在します。弊社でもExcelテンプレートを無料配布しております。
また、予算作成や管理を効率化するためのクラウドベースの会計ソフトも多数あります。特に中小企業向けには、弥生会計やFreeeなどのツールが人気です。これらのツールは、予算の作成だけでなく、実績との比較や自動化されたレポート作成機能を提供してくれるため、経理経験がない方でも使いやすいです。
予算を見直し、計画を継続的に改善するコツ
一度予算を作成したら、それで終わりではありません。経営状況や市場環境は常に変化しているため、予算も柔軟に対応できるように定期的な見直しが必要です。
おすすめは、毎月予算と実績を比較し、どこがうまくいっているのか、どこに修正が必要かを確認することです。これにより、計画通りに進んでいるかどうかを早期に判断し、必要に応じて修正を加えることができます。売上が予想を超えている場合は、追加投資を検討する機会にもなりますし、逆に費用が予算を上回っている場合は、コスト削減の対策を講じることができます。
成功する予算作成のためのアドバイス
最後に、予算作成を成功させるためのアドバイスをいくつかご紹介します。
まず、楽観的すぎない計画を立てることが重要です。売上目標やコスト削減を無理に高く設定しすぎると、実際の数字との乖離が生じ、予算の実行が難しくなります。特に初めて予算を作成する場合は現実的で達成可能な範囲で計画を立て、少し余裕を持たせることが賢明かもしれません。
さらに、社員やチームとの連携も成功の鍵です。予算は経営者や管理部門長だけでなく、会社全体の取り組みとして理解されるべきです。全員が予算の意義や目標を共有し、協力して目標達成に向けて動くことで、より効果的な予算管理が可能になります。
また社内リソースでの作成が難しい或いは時間が取れない場合は、専門家への外部委託を検討するのも一つの手段となります。社内の状況に併せて適切な方法で予算作成を進めてみてください。
まとめ:予算作成が経営に与える力
予算作成は、経営の透明性を高め、計画的な成長をサポートする重要なツールです。特に中小企業の経営者や管理部門長にとっては、資金繰りや事業計画を見通すために欠かせないものです。シンプルなステップで始められる予算作成を通じて、未来の成長を見据えた経営を実現しましょう。
弊社は最終的なゴールを自社での経理業務完結、「経理の内製化」とする会社を全面的にサポートします。今回ご紹介したような簡易的な予算作成から、本格的な予算作成のサポートも可能です。
業務フローの見直しや経営者にとって有用な管理会計の構築、既存のシステム利用はもちろん、新たなICTの導入についても一緒に行います。また既存社員の育成や、新たな人材採用に必要な募集要項作成から面接に至るまで、ワンストップでサポート致します。是非ご相談ください。