中小企業の経営者の皆さま、日々の経営活動の中で「資金繰りがうまくいかない」「広告費をかけても思うように売上が上がらない」といった悩みをお持ちではないでしょうか。特に、経営、経理、そしてマーケティングのバランスを取ることは、事業の成長を目指す上で重要な要素です。しかし、これらがどのように関わり合い、どのように活用すべきかは意外と見落とされがちです。

今回は、経営と経理、マーケティングの関係性をわかりやすく解説し、中小企業の経営者が陥りがちな問題点とその解決策についてご紹介します。

経営と経理の関係:正確な財務データが成功のカギ

経営の基本は、企業の持続的な成長と利益の最大化を目指すことです。経営者は目指すべきビジョンに向けて、戦略を立案し、限られたリソースをどのように分配するかを判断します。このとき、正確な財務データが必要不可欠です。中小企業の経営者であれば、一度は資金面での悩みに頭を痛めた経験はあるかと思います。どんなに優れた商品やサービスであっても金銭面の不安があっては、満足な下地を作る事ができません。

経理部門が提供する財務諸表やキャッシュフロー計算書は、企業の健康状態を映し出す「鏡」のようなものです。これにより、収益性の分析や資金繰りの見通しを立てることが可能になります。例えば、新規事業の立ち上げや設備投資を検討する際、経理データをもとにリスクを評価し、無理のない投資計画を策定することができます。

また、経理データは、経営者が日々の意思決定を行うための羅針盤でもあります。適切な資金管理を行うことで、不要な出費を抑えつつ、必要な投資にはしっかりと資金を充てることができます。

経営とマーケティングの関係:売上拡大のための戦略的アプローチ

マーケティングは、市場調査の段階から販売促進に係る施策まで、幅広い範囲を網羅している活動で、製品やサービスを市場に届け、顧客を惹きつけるための活動です。マーケティングは顧客のニーズを探り、顧客から商品が求められる状態を作ることで売上に貢献するのです。中小企業にとって、限られた予算の中で効果的なマーケティングを行うことは大きな課題ですが、適切に実施することで売上の拡大やブランドの認知度向上を実現できます。

しかし、マーケティング活動はその費用対効果を評価するのが難しい部分もあります。よく考えられがちなのは、一つの施策がそのまま売上に直結するという考え方です。「施策を打ったからには売上に直結する!売上が上がらないのであればその施策は失敗だ!」一見するとその様に思われてしまうところではありますが、売上は様々な要因が重なり合って変化するため、一つの施策の良し悪しを端的に判断するのは得策ではありません。

そのため経営者は事業全体の内容や市場・顧客、戦略と合致したマーケティング計画を立てることが必要です。また、顧客のニーズや市場の変化を的確に捉えることで、より適切なマーケティング施策を実行し、競争優位を築くことが可能になります。

マーケティング戦略を成功させるためには、経営者のビジョンと経営方針をしっかりと反映した施策が求められます。ここで、経理とマーケティングのデータを組み合わせることで、より精度の高い戦略立案が可能になります。

経理とマーケティングの関係:費用対効果を最大化するために

マーケティング活動には、広告費やプロモーション費用などのコストが発生します。これらのコストがどれだけの売上を生み出したのかを把握することは、経営の効率化に欠かせません。しかしながら、前述したように売上はマーケティング施策のみならず、市場や競合企業の動きなど、絶え間なく変化する環境にも影響を受け変化するものです。そのため正確なマーケティング効果を把握することは困難を極めますが、適時適切な経理データがある事で、経営判断に大きく役立つことがあります。

例えば、従業員が30名を超えるような規模感や一気に成長した企業で起こり得る、費用の垂れ流しを防止する効果。このような状況において、マーケティング活動は効果や適切に費用が配分されているかをあまり考えられず見過ごされがちになります。そのような時、毎月の月次データを用いることで、再考するきっかけとなる事があります。

また、ある広告キャンペーンがどれだけの新規顧客を獲得し、どれだけのリピート顧客を生んだのか。キャンペーンの投資利益率(ROI)を算出し、次回のマーケティング戦略をより効果的に改善することができます。この中で、広告費用の一部をSNSマーケティングに振り向けることで、よりターゲット層にリーチしやすくなるという判断をする事ができるようにもなります。

前述したように、経営・経理・マーケティングを密接に結びつけることで、健全な会社経営を行う事ができますが、以下のような課題が生じている事も少なくありません。

課題1:マーケティングに投資したが効果が見えない

課題
「広告を出しても、売上が伸びない」「どこに予算を割くべきか分からない」という声が多く聞かれます。前述したように、マーケティング施策単体による正確な成果を測定することは困難を極めます。一方で、適時適切な会計データがある事で、マーケティング活動の費用対効果を経営判断の材料として役立てることは可能になります。

解決策
やはり適切な経理が行える環境を整える事と、長すぎず短すぎないトライアンドエラーのマーケティング施策実行が重要と言えるでしょう。この場合、会計データを活用した詳細な分析が求められます。売上データと広告費を細かく紐づけた会計データを作成し、関連ある非財務データを分析することで、どの施策が売上に影響を及ぼしているかある程度可視化することが可能です。また期間が短すぎると、良くも悪くも一時的な外的要因の影響を受ける可能性が高まり、マーケティング施策の効果測定は難しくなります。そのため、一度実施を判断した施策に関しては、社内で一定のルールを決めた上で、最低限の期間は実行し続けることをオススメします。こうすることで、経営者が適切なマーケティング投資を行えるようになります。

課題2:戦略を考える時間や余裕がない

課題
中小企業においては、税理士などに決算作業を任せている関係上、経営に有用なデータとしての会計データをタイムリーに利用できない会社も多いです。また中小企業経営者の中には、経理業務、特に財務的な業務に時間を割かれているため、戦略的な思考に時間を使う余裕がなくなっていることがしばしばです。これらの状況下では、ビジネスの成長に向けた具体的な行動を起こすことが難しくなります。

解決策
まず経理業務の効率化を図ることが重要です。経理人員を採用することは第一に考えられる有効な方法ですが、クラウド会計ソフトの導入や、経理業務の一部を外部に委託することで、経営者は本来注力すべき戦略やマーケティングに集中することができます。

経営、経理、マーケティングの3つは企業活動において密接に関わり合い、互いに支え合っています。経営者はビジョンに基づいた戦略を策定し、その実行にあたって経理データを活用し、財務の健全性を確保しながら、マーケティングで顧客を惹きつけ、売上を伸ばすことが求められます。特に中小企業では、限られたリソースの中で経理とマーケティングの連携が不可欠です。財務データに基づいた経営判断と、顧客ニーズに応じた戦略的なマーケティングを融合させることで、持続可能な成長が実現できます。
これを達成するためには、正確な経理データの活用と、効果的なマーケティング施策が重要となります。適切な分析と意思決定が行える環境を整えるためにも、経理業務の効率化や外部リソースの活用が経営者にとって大きな助けとなるでしょう。


弊社では、経理業務の内製を目指した効率化やマーケティング戦略の支援を行い、企業の成長をサポートしています。もし、経理業務やマーケティングでお困りの点があれば、ぜひ一度ご相談ください。