問題提起:
企業経営において「お金の管理」は不可欠ですが、その役割が「経理・財務・経営企画」に分かれることを正しく理解している経営者は意外と少ないのではないでしょうか?特に中小企業では、経理担当者が財務や経営企画まで兼務するケースが多く、業務負担の増加や経営判断の精度低下を招くリスクがあります。
記事を読んでわかること:
本記事では、経理・財務・経営企画の違いを明確にし、それぞれの役割や業務内容を詳しく解説します。また、企業の成長フェーズに応じて「どの分野の人材を採用すべきか?」を判断するポイントも紹介します。
記事を読むメリット:
自社の経営体制を見直し、適切な人材配置を行うことで、業務の効率化と企業の成長を実現できます。経営者が知っておくべき基礎知識を押さえ、より戦略的な経営判断ができるようになるでしょう。
なぜ「経理・財務・経営企画」の違いを知るべきなのか?
中小企業の経営者にとって、会社の資金管理は最重要課題の一つです。しかし、「お金の管理」と一言で言っても、その役割には大きく分けて経理・財務・経営企画の3つがあります。これらの役割の違いを正しく理解し、それぞれの業務を適切に管理・運営することが、企業の持続的な成長に不可欠です。
例えば、経理は日々の取引を記録し、財務諸表を作成することが主な業務ですが、財務は資金調達や資金繰りの管理、キャッシュフローの最適化に重点を置きます。一方で、経営企画は企業の将来の成長戦略を考え、事業の方向性を決定する役割を担います。
中小企業では、これらの役割が明確に分かれておらず、**「経理=お金の管理全般」**と誤解されることが少なくありません。その結果、経理担当者が財務や経営企画の業務まで担うことになり、負担が大きくなるだけでなく、経営判断に必要な専門知識が不足する可能性があります。
本記事では、業界・業種が違っても使える、一般的なそれぞれの役割の違いを詳しく解説しながら、企業の成長フェーズに応じて**「どの分野の人材が必要なのか?」**を考えるためのポイントを提供します。自社の経営体制を見直し、より効率的な運営を実現するための参考にしてください。
経理・財務・経営企画の基本的な役割と違い
まずは、それぞれの業務内容とその違いについて、詳しく解説していきます。
経理とは?
経理の主な役割は、「会社の取引を正確に記録し、財務状況を明確にすること」です。
あまり多くに知れ渡っている事ではないですが、経理とは経営管理の略称の事で、公的な会社業務に繋がるお金の処理を担当する仕事と言われています。
企業の経済活動は日々発生します。仕入れ、販売、給与支払い、税金の納付など、さまざまな取引が行われ、それらを記録・管理するのが経理の仕事です。経理業務が正しく機能していないと、企業の財務状況が正確に把握できず、適切な経営判断が難しくなります。そのため、経理は企業経営における「基盤」とも言える重要な役割を担っています。
【主な業務内容】
仕訳・帳簿管理:会計ソフトを用いて取引を記録し、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成します。記録の正確性が求められます。
請求書・領収書の管理:顧客への請求や支払い処理を行い、未回収の売掛金が発生しないよう管理します。
給与計算・社会保険手続き:従業員の給与を計算し、源泉徴収や社会保険料の手続きを行います。
決算処理:毎月の試算表を作成し、年次決算を行うことで、会社の財務状況を明確にします。
税務申告の準備:法人税、消費税、住民税などの税務申告を税理士と連携して行います。
上記が一般的な経理の業務内容で、月初10日までにはこれ、20日までにはこれなど、比較的ルーティン化される業務が多い事も特徴です。また会社によっては営業(事務)が請求書の発行を行ったり、労務や総務が給与計算を行ったりと会社によって若干違いがありますが、仕訳を行い(月次)決算を行うという事に関してどの会社であっても普遍的な経理の仕事になるかと思います。
【経理の役割のポイント】
- 企業の日々の取引を正確に記録することが最優先
- 過去の取引データを整理し、財務諸表を作成することで、会社の現状を把握する役割を担う
- 税務や決算を適切に管理し、適法な会計処理を実施することで、コンプライアンスを遵守する
経理についての詳細は以下の記事もご参照ください。
財務とは?
財務の役割は、「資金を適切に管理し、企業の健全な成長を支えること」です。
経理が過去の取引を正しく記録する役割を担うのに対し、財務は**「現在~未来の資金管理」**を担います。これから動かす予定のお金を管理する未来会計が財務の役割と言えます。財務担当者は、企業の資金繰りを適切に管理し、必要に応じて資金調達を行い、金融機関や投資家との交渉も担当します。
【主な業務内容】
資金繰り管理:短期・長期の資金計画を策定し、会社の運転資金が常に確保されるよう管理します。
資金調達:銀行融資、社債発行、投資家からの資金調達などを行い、企業の成長に必要な資金を確保します。
金融機関との交渉:融資条件の調整や、返済計画の見直しなどを行います。
キャッシュフロー管理:収支のバランスを最適化し、無駄な支出を抑えることで、会社の資金を有効活用します。
リスク管理:為替リスク、金利変動リスク、信用リスクなどを分析し、適切なリスクヘッジを行います。
この他に、上場会社やIPO準備会社などにおいては「財務と経理の分離」という概念から口座のお金を動かす仕事も財務担当の役割となっているところも多いです。
※財務と経理の分離とは、お金を記録する人(経理)とお金を動かす人(財務)を分けることで、不正な資金を流失を抑制させるための統制の事です。
【財務の役割のポイント】
- 現在~未来の資金管理を担い、企業の成長を支える重要な役割
- 資金調達や財務戦略を策定し、事業運営に必要な資金を確保する
- 経営者と連携し、投資判断や事業拡大のための資金計画をサポートする
- 金融機関やステークホルダーとの交渉・折衝やビジョンを描く
経営企画とは?
経営企画の役割は、「企業の未来を設計し、成長戦略を策定すること」です。
経営者の参謀ともいえる立場として、経営方針実現のためリーダー役となる事が多いです。
企業が長期的に発展していくためには、事業の方向性を明確にし、計画的に成長戦略を立てることが必要です。その役割を担うのが経営企画です。
【主な業務内容】
経営戦略の立案:市場環境の分析を行い、中長期的な成長戦略を策定します。
予算管理・KPI設定:収益目標を設定し、事業のパフォーマンスを定量的に評価します。
新規事業開発:新たな収益源を生み出すための事業機会を模索し、実行計画を立案します。
企画・特命業務:M&AやIPOなど、トップシークレットで水面下で進める業務の旗振り役を担います。
予算管理などは経理や財務担当者が行う事も少なくありませんが、KPIの設定などは他部署との連携やビジネスモデルの理解分析能力、マーケティングスキルなど会計知識に囚われない幅広い知識が求められます。
【経営企画の役割のポイント】
- 会社の将来を設計し、成長戦略を描くことが最大の役割
- 数字を基に経営判断を行い、事業の方向性を決める
- 業務のDX化や新規事業の開発を推進する
それぞれの業務の関係性と役割の重なり
経理と財務の違い:日々の管理 vs. 資金調達・戦略
経理は日々の取引を記録し、会社の財務状況を明確にする役割を担います。一方、財務は資金調達や資金管理を行い、企業の成長を支える重要な業務です。経理が「過去のデータを整理する」のに対し、財務は「未来の資金計画を立てる」という違いがあります。
財務と経営企画の違い:資金調達 vs. 事業戦略
財務は資金調達を中心に企業の資金管理を行いますが、経営企画は事業の方向性を決定し、成長戦略を立案する役割を担います。財務は短期・長期の資金繰りを管理するのに対し、経営企画は市場分析や新規事業の立案など、より広範な視点で企業経営をサポートします。
経理と経営企画の違い:過去データ管理 vs. 未来の戦略立案
経理は日々の業務記録を管理し、正確な財務諸表を作成することが目的ですが、経営企画は企業の成長戦略を立て、経営目標を達成するための計画を策定します。経理が「現在の状態を正確に把握する」役割を担うのに対し、経営企画は「未来の方向性を考える」役割を果たします。
どの人材が凄いのか?
一般に各部署に優劣はありません。そのため経理より経営企画の方が偉いなどは考えるべきではないと私は考えてます。とは言え一方で、会計に関わる方のキャリアパスとしては経理からスタートして、財務や経営企画に進む方が多く、初めから財務や経緯企画を担う人は少数という印象です。
以下の図のように、経理で作成された過去情報をもとに、財務による未来の資金関連の流れを、経営企画では更に中長期的な全社的な戦略を立案・実行します。

中小企業にとって必要な人材とは?
会社の規模やフェーズで変わる必要な人材
当たり前のことですが、企業の成長フェーズによって、求められる人材のスキルや役割は変化します。創業期、成長期、安定期それぞれのフェーズで、経理・財務・経営企画のどこに重点を置くべきかを考える必要があります。
創業期(経理担当のアウトソーシングで十分か?)
創業期は資金に余裕がなく、経理担当を雇う余裕がない企業も多いです。そのため、経理業務をアウトソーシングすることも有効な選択肢です。特に年次の決算申告も併せて税理士に依頼することが多いフェーズになります。
成長期(財務戦略の専門家が必要か?)
事業が成長するにつれ、資金調達や資金管理が重要になります。融資や投資を活用しながら、安定的なキャッシュフローを確保するために財務戦略の専門家が必要になることがあります。早期の月次確認の行うためにも専任の経理の採用を検討したり、採用財務コンサルタントなどの専門家の利用を検討する段階になるかと思います。
安定期(経営企画の強化が求められるか?)
企業が安定すると、新規事業の展開や長期的な成長戦略の策定が求められます。経営企画の強化により、さらなる企業価値の向上が可能となります。社内人員はもちろん、外部からの採用も検討する段階です。
経理・財務・経営企画を兼務させる場合の注意点
中小企業では、一人の担当者が経理・財務・経営企画を兼務することも珍しくありません。しかし、それぞれの業務は専門性が求められるため、業務負担が過度にかからないように注意が必要です。担当者に適切なスキルがあるのかの見極めも重要になってきます。
また特に安定期以降はより強固な組織体制にするためにも、前述したような財務と経理の分離を図れる体制を構築するもの重要です。
専門家の利用 vs 内製化の判断基準
人材の確保は、何も採用だけではありません。会計人材の採用が難しくなってきている今日においては、外部へのアウトソースシングやコンサルティングの利用も選択肢の一つになってきます。
人材を内部で確保するのか、外部に委託するのかは企業の状況、考え方によって変わってくると考えてよいでしょう。どちらにも一長一短があり、人材採用であれば、原則フルタイムの採用を検討するかと思いますので、時間的なコミットを得られ、場合によっては他の業務へのサポートや社内のコミュニケーションの円滑化が期待されます。一方で外部専門家に比べるとスキルや知識に不足がある事も考えられ、急な退職や昇給も含めた将来的なコスト増など、社員であることによるリスクも最低限考えなければなりません。
外部の専門家はスキル・知識は十分である事が多く、人材採用に比べるとコストを抑えることができる場合がある反面、本当に業務を依頼するに足るスキル・知識を持っているかの見極めが難しかったり、社員の様に多種多様な業務を依頼することは難しいという側面もあります。
このような特性を加味し、実際のコストや業務の専門性の有無を考えながら、ハイブリットに利用するという判断も含めた、最適な選択をすることが重要です。
まとめ:自社に必要な人材を見極めるポイント
今回はお金にまつわる部署としての経理・財務・経営企画の違いを確認してきました。このような人材を採用するにあたり、漠然と「とりあえず経理を採用しよう」ではなく、まずは自社の課題を整理し、現状を把握、どこに問題があるのかを明確にすることが第一歩です。その上で、自社の成長フェーズに合わせ、経理・財務・経営企画のどの分野の人材が必要かを検討する必要があります。そしてコストや専門性の観点から、どの業務を内製化し、どこをアウトソーシングするのかを決定することが良いでしょう。
適切な人材配置を行うことで、企業の成長と安定を実現し、持続可能な経営を目指すことができます。この記事が少しでも経営者の皆様の参考になれたのであれば幸いです。
弊社は最終的なゴールを自社での経理業務完結、「経理の内製化」とする会社を全面的にサポートします。経営基盤の構築段階や内部統制の強化といったどのようなフェーズであってもサポートも可能です。
業務フローの見直しや経営者にとって有用な管理会計の構築、既存のシステム利用はもちろん、新たなICTの導入についても一緒に行います。また既存社員の育成や、新たな人材採用に必要な募集要項作成から面接に至るまで、ワンストップでサポート致します。是非ご相談ください。