問題提起:
中小企業の経営者や管理部門長にとって、経理業務は複雑で理解が難しいと感じることが多いです。特に、経理未経験の方にとっては、その重要性を理解しつつも、具体的に何から手を付けるべきかわからないことが課題です。

記事を読んでわかること:
この記事では、経理の基本的なポイントを解説し、未経験者でもすぐに実践できる知識を提供します。簿記の基礎からキャッシュフロー管理、決算の重要性まで、経営に必要な情報が網羅されています。

記事を読むメリット:
経理の基礎を理解することで、会社の財務状況を正確に把握し、経営判断に役立つデータを得られるようになります。これにより、会社の健全な運営を支える力を身につけ、自信を持って経営を進めることができます。

経理未経験の経営者や管理部門長にとって、経理は一見難しく見えるかもしれません。しかし、経理の基本的なポイントを押さえておけば、経営の意思決定に役立ち、会社の健全な運営を支える大切な柱となります。このガイドでは、経理経験がない方でも理解しやすいように、最低限知っておくべき経理のポイントを解説します。これにより、会社の財務状況を正確に把握し、経営の舵取りに自信を持てるようになるでしょう。

経理の基本は、会社の「お金の流れ」を正確に記録し、それをもとに経営の判断を行うことにあります。これを理解するためには、まず簿記の基本的な考え方を知ることが大切です。

複式簿記の仕組み

簿記は仕訳というもので取引が表現されます。これは左右に取引の内容を表す「勘定科目」と金額を記載するもので、右側を「借方」と左側を「貸方」と呼びます。すべての取引は例外なくこの2つで記録されます。たとえば、商品を売ってお金が入ってきた場合

借方        貸方
現金 1,000,000 / 売上 1,000,000 

このように「現金」が借方(右側)に、「売上」が貸方(左側)に記載されます。これにより、すべての取引がバランスよく記録され、どこにお金が流れたかが明確になります。また先ほど述べた通り、売上を計上する(貸方に記載する)には相手(借方に来る何か)が必要となるため、通常は売上の過大計上など不正は起こりにくいスキームになっています。

決算と月次決算の重要性

会社の業績を把握するためには、定期的な「決算」が必要です。年次決算だけでなく、毎月行う「月次決算」も重要です。月次決算では、経営の状況をタイムリーに確認でき、問題があれば早期に対処できます。経営者にとってはこの月次の数値データの推移を確認する事が、一番わかりやすい経営成績確認の指標になるかと思います。

財務諸表の基本

経営者が理解すべき財務諸表は主に2つ、「損益計算書(P/L)」と「貸借対照表(B/S)」です。損益計算書は、一定期間の収益と費用を示し、会社が利益を出しているかどうかを確認するための書類です。貸借対照表は、会社の資産・負債・純資産のバランスを示し、会社の財務状態を把握するためのものです。

ポイント

損益計算書は一定期間の成績を表しているのに対して、貸借対照表はその時点の冨を表している点に違いがあります。

経営者が特に注意しなければならないのは、売上だけでなく実際の「キャッシュフロー(現金の流れ)」です。売上があっても、現金が手元にないと事業運営が困難になるため、キャッシュフローを常に管理することが重要です。

キャッシュインフローとキャッシュアウトフロー

キャッシュフローとは、会社に入ってくるお金(キャッシュインフロー)と、出て行くお金(キャッシュアウトフロー)を意味します。たとえば、商品の販売でお金が入ってくるタイミングと、仕入れや人件費でお金が出て行くタイミングが異なることがあります。これをしっかり管理しないと、短期間で資金がショートするリスクがあります。

キャッシュフロー計算書の活用

月次でキャッシュフロー計算書を確認し、資金の動きを把握することが重要です。キャッシュフロー計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つに分類されます。営業活動によるキャッシュフローがプラスであることが、会社の健全な運営を示す指標の一つです。

資金繰り表でのキャッシュ管理

前述したキャッシュフロー計算書は会社の健全性を確認する有用な資料であり、上場企業であれば開示が義務付けられる重要書類になります。一方で、税務申告のみをメインとした中小企業においてはキャッシュフロー計算書の作成は義務付けられておらず、作成経験がない経理担当者も多いかと思います。また成長段階の企業であれば、週次、或いは日次で資金繰り状況を追う必要があるかもしれません。そういった企業は自社の状況にあった資金繰り表を作成し、キャッシュの管理をする事をオススメします。

会社のキャッシュフローを安定させるためには、請求書の発行と支払管理を効率的に行うことが重要です。

請求書発行のタイミング

請求書はできるだけ早く発行することが大切です。売上が立った後すぐに発行することで、早期に現金が回収でき、資金繰りを安定させることができます。請求書はお客様に提供した商品・サービスの対価として発行することができるセンシティブなものです。たかが請求書と考えず、発行漏れなどが起きないフローを構築することが重要です。

支払期限管理

仕入先や業者に対する支払期限を守ることは信頼関係を築くためにも最重要ですが、自社の資金繰りに無理がないよう、適切に支払いタイミングを調整することも重要です。もしも支払サイトに変更をお願いする場合は、経営者やセクションリーダーから先方に相談するなどして、誠意をもって対応することを心がけましょう。

未収金と未払金の管理

未収金(請求書を出したが、まだ入金されていない金額)や未払金(支払うべきだがまだ支払っていない金額)は、しっかりと管理してトラブルを防ぐ必要があります。取引先との信頼関係を維持するためにも、未払いが発生しないような体制を整えることも当然ながら、未回収の請求がある場合はしっかり確認を取る事も大切です。

経理の負担を軽減し、透明性を保つためには、経費精算のルールをしっかりと整備する必要があります。

経費精算の透明性を確保

経費を精算する際には、すべての領収書を確実に提出させ、誰がどのような目的で使ったのかを明確にするルールが必要です。こうした透明性があることで、経理の負担が減り、不正な経費計上を防ぐことができます。現実的な中小企業の経理で実は問題が多いのがこの経費精算になります。特に売上規模がまだ大きくない会社や、従業員の人数が多い会社においては、この経費精算が遅延することで、月次決算の数値に大きな影響を及ぼすことが考えられます。経営者が率先して期日などルールを守る姿を見せることで、従業員の意識を変える事が重要です。

経費項目の分類

経費の分類をしっかりと行うことで、経理作業がスムーズになり、経営陣も各部門でどのようにお金が使われているかを把握しやすくなります。たとえば、「交際費」「交通費」「会議費」など、主な経費項目を明確にしておくとよいでしょう。

税務や社会保険は経営者にとって非常に重要な分野であり、法律に違反しないよう適切な管理が求められます。

基本的な税務の理解

会社が負うべき税金には、法人税、消費税、源泉徴収税などがあります。これらの税金は、売上や利益に応じて計算され、適切に申告し納税することが義務付けられています。また通関納付などが必要なものでもあり、納税に遅延が起きないように資金を用意しておく事も考えなければなりません。

社会保険と労働保険の手続き

社員を雇用している場合、社会保険(健康保険や厚生年金保険)と労働保険(雇用保険や労災保険)の手続きを行う必要があります。これらの手続きは法定義務であり、期限内に正確に対応しなければならないため、社内の体制を整備することが求められます。

内部統制とは、会社内での業務が適切に行われ、不正が発生しないようにする仕組みのことです。経営者が管理すべき重要なポイントです。

内部統制の重要性

社内の業務プロセスにおいて、誰が何を行っているのかを明確にし、業務がスムーズに流れるようにすることが大切です。特に、経理業務においては、不正な支出や誤った記帳が発生しないようなチェック体制を整えることが必要です。不正が起きやすい状況としては一人の経理担当者が入出金と会計処理の両方の権限を持つ場合です。このような場合は経理担当者が不正な処理をして現金を着服したり、不要なものを購入し個人利用するなどの不正が発生する環境である事を理解し、注意する必要があります。

コンプライアンス管理

法律を守ることはもちろん、社内規則や社会的なルールも守ることが求められます。コンプライアンス違反が発生すると、会社の信用を失い、最悪の場合、罰則が科せられることもあります。そのため、定期的に法令を確認し、適切な対応を取ることが大切です。

今回は経理経験のない経営者や管理部長のための経理の基本について紹介いたしました。会計情報は単に申告納税のためのみならず、会社の状況を把握するためにも重要な指標となります。経理業務を全て社内で完結することが難しい場合、外部の専門家を活用することも一つの選択肢です。経理業務をアウトソーシングすることで、コスト削減や業務効率化を図ったり、信頼できる専門家と連携し、適切なアドバイスを受けることで、経営判断に重要な情報を手に入れることができるでしょう。


弊社は最終的なゴールを自社での経理業務完結、「経理の内製化」とする会社を全面的にサポートします。
業務フローの見直しや経営者にとって有用な管理会計の構築、既存のシステム利用はもちろん、新たなICTの導入についても一緒に行います。また既存社員の育成や、新たな人材採用に必要な募集要項作成から面接に至るまで、ワンストップでサポート致します。