問題提起
経営者として、目的(Objective)と目標(Target)を正確に理解していますか?これらを混同すると、チームの方向性が曖昧になり、無駄なリソースの消費や長期的な成長の停滞を招く可能性があります。

記事を読んでわかること
この記事では、「目的」と「目標」の違いを明確にし、それぞれを経営にどう活用すれば良いのかを解説します。加えて、具体例やフレームワークを通じて、実践的な方法を学べます。

記事を読むメリット
「目的」と「目標」を正しく設定し活用することで、企業の長期的な成長を支える戦略が立案でき、短期的な成果も効率的に達成できるようになります。この記事を読むことで、経営の羅針盤を再確認し、チームを効果的に導く知識が得られるでしょう。

経営の場面では日々、意思決定が求められます。その中で、方向性を示す目的(Objective)と、成果を具体的に表す目標(Target)の区別が曖昧になると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • チームが全体の方向性を見失い、どの方向に進むべきか分からなくなる
  • 資源や時間などのリソースが無駄に使われる
  • 短期的な成果に囚われ、長期的な成長が妨げられる

たとえば、ある会社が「売上を上げる」という目標に向かって動いているとします。しかし、その背後にある「なぜ売上を上げるのか」という目的が不明確であれば、短期間での値下げや無理な営業が行われ、結果的にブランド価値を損なう可能性があります。

この記事では、目的と目標の違いを正確に理解し、それを経営にどう活用できるのかを具体的に解説します。

目的(Objective)とは?

「目的」(Objective)とは、会社が存在する理由や、大きなビジョン、理念を指します。戦略思考の中では最上位の概念と考えられるでしょう。これが明確でなければ、会社全体の方向性が定まりません。抽象的でありながらも、長期的な方向性を示し、すべての行動や決定の基盤となるものです。

例として、以下のようなものがあります。

  • 地域社会に貢献する
  • 持続可能な社会を実現する
  • 顧客の生活を豊かにする

目的は具体的な数字や期限を伴わず、抽象的で広範囲な内容を含むのが特徴です。

目標(Target)とは?

一方で、「目標」(Target)とは、目的を達成するための具体的で測定可能なアクションや成果を指します。つまり目的を達成するために、経営資源を投入する具体的な的とも言い換えられます。目標は短期的または中期的なスパンで設定され、行動計画や達成度を測定する指標が伴います。

例として、以下のようなものがあります。

  • 売上を前年比20%増加させる
  • 1年以内に新製品を市場に投入する
  • 社員満足度を90%以上にする

目標には期限や数値が伴い、進捗をモニタリングする指標(KPI)としても機能します。

図解

目的目標
意味長期的な方向性や存在理由
戦略思考の最上位の概念
具体的な成果や行動計画
経営資源を投入する具体的な的
地域社会に貢献する顧客数を1年で500人増加させる
時間軸長期的(3年以上)短期〜中期(数ヶ月〜1年)

このように、目的(Objective)は全体の「なぜ」を答えるものであり、目標(Target)は「WHO(ターゲットは誰(何)か)」を示します。目的と目標は相互に補完し合う関係ですが、その違いを意識することでより効果的な経営が可能になります。

目的(Objective)の役割

企業の羅針盤として機能

目的は、企業全体の方向性を決定します。たとえば、「持続可能な社会を実現する」という目的を掲げる企業は、環境に配慮したビジネスモデルを優先する意思決定を行います。

企業文化を形成

明確な目的がある企業では、社員が共通の価値観を共有しやすくなります。これにより、企業の一体感が高まり、社員のエンゲージメントも向上します。

目標(Target)の役割

行動計画を具体化する

例えば、「来年までに新製品を10,000個販売する」という具体的な目標が設定されることで、社員は自分たちの役割を明確に認識しやすくなります。

成果を測定するための基準
目標はKPI(重要業績評価指標)などの指標を用いて進捗を評価する際の基盤となります。

例1: スタートアップ企業

  • 目的: 「イノベーションを通じて社会問題を解決する」
  • 目標: 「来年度までに1000万円の資金調達を達成する」

この例では、目的が会社の存在意義を示し、目標が具体的な行動計画として役立っています。

例2: 小規模企業

  • 目的: 「地域で信頼されるサービスを提供する」
  • 目標: 「顧客満足度を90%以上に引き上げる」

このような実例を参考にすることで、目的と目標を企業経営に効果的に活用するヒントが得られるでしょう。

SMART目標の活用

目標を設定する際には、以下の5つの基準を満たすようにすると効果的です。

  • Specific(具体的)…定量的な的を設定する。
  • Measurable(測定可能)…達成度を測定できる指標を設定する。
  • Achievable(達成可能)…実現可能な範囲内で設定する。
  • Relevant(目的と関連性がある)…目的(Objective)に直結した目標であること。
  • Time-bound(期限がある)…達成までの具体的な期限を明確にする。

たとえば、「売上を増やす」ではなく、「来年度までに売上を前年比20%増加させる」と設定することで、達成に向けた行動が明確になります。

ゴールデン・サークル理論

サイモン・シネック(Simon Sinek)氏が提唱したゴールデン・サークル理論は、人々の心を動かす効果的なコミュニケーション方法です。以下の3段階で考えます。

  • Why(なぜ): なぜその事業をしているのか、その存在意義や目的を指します。企業のビジョン、ミッション、価値観などがこれに当たります。
  • How(どのように): WHYを実現するために、どのような行動や戦略をとっているのか、その方法論を指します。
  • What(何を): 提供する商品やサービスそのものを指します。

ポイントはWHATではなく、WHYから説明することが重要という点です。

現状分析とフィードバック

今の目的と目標が企業の現状や市場環境に適しているかを確認

例)チームメンバーに目的と目標を尋ねて、答えが一致しているかをチェックします。注意点として、チームメンバーの目的が必ずしも企業としての目的に一致しない事があります。これは当事者の視点のレベルによって、目的と思っていた事が戦略や戦術になったりすることがあるという点です。このような場合は今一度しっかりと共通の目的を確認する事が重要になります。

定期的な見直し

経営環境の変化に応じて柔軟に調整する事も重要です。この際、経営者の直感にのみ頼るのではなく、市場動向などを加味して見直しを行う事が有用です。

目的と目標を明確にし、それぞれを適切に活用することは、経営成功の鍵です。長期的な目的が「企業の未来」を指し示し、具体的な目標が「その未来への道筋」を示します。言葉の意味をしっかり使い分けて、それを更に戦略、戦術へと落とし込むことで、会社の目指すものと一致した施策を講じることができます。是非今一度、目的の見直しと共有から行ってみてはいかがでしょうか。


弊社は最終的なゴールを自社での経理業務完結、「経理の内製化」とする会社を全面的にサポートします。今回ご紹介したような目的・目標の策定といった経営基盤の構築段階からのサポートも可能です。
業務フローの見直しや経営者にとって有用な管理会計の構築、既存のシステム利用はもちろん、新たなICTの導入についても一緒に行います。また既存社員の育成や、新たな人材採用に必要な募集要項作成から面接に至るまで、ワンストップでサポート致します。是非ご相談ください。