問題提起:
企業経営において「戦略(Strategy)」と「戦術(Tactic)」という言葉はよく使われますが、この2つの違いを正確に理解し、使い分けている人は意外と少ないものです。これらを正しく区別することが難しく、混同することで経営が思うように進まない原因となることがあります。
記事を読んでわかること:
本記事では、戦略と戦術の違いをわかりやすく解説し、さらに目的・目標との関係性についても触れながら、経営やマーケティング活動を成功に導くためのポイントをご紹介します。
読むメリット:
この記事を通じて、戦略と戦術の違いを正しく把握し、自社の会社経営にマーケティング視点での施策を取り入れる第一歩となる事ができるでしょう。
戦略と戦術の違いとは?
まずは、戦略と戦術の定義と特徴を確認しましょう。
戦略(Strategy)とは
戦略は、企業や事業が長期的に目的を達成するための資源配分の選択を含む大枠の計画を指します。これには「どの市場で競争するか」「どのように顧客を獲得するか」といった方向性の決定が含まれます。
特徴
- 長期的な視点で考えられるもの
- 大枠の計画や方向性を示す
- 人的資源や予算をどこに重点的に使うかリソースの配分を決めます。
- 目的や目標を達成するための手段
- 消費者からは直接見えにくいもの
例
仮にあなたの会社が中小企業向けに人事管理のソフトウェアを販売しているとします。戦略の例としては、
「中小企業経営者の課題を解決する専門性をアピールし、市場での地位を確立する」
が挙げられます。
戦術(Tactic)とは
戦術は、戦略を実行に移すための具体的な行動計画(プラン)です。戦略が「どのように目標を達成するか」という大枠を示すのに対し、戦術はその枠組みを細かく分解し、「具体的に何をするか」を示します。
特徴
- 短期的な行動計画
- 戦略を支える具体的な施策
- 現場で実行可能な内容
- マーケティングの過程で消費者が実際に見たり聞いたり、体験したりするもの
例
先ほどの例に基づく戦術は、
- 中小企業経営者向けの無料ウェビナーを毎月開催する
- SNSで経営ノウハウやソフトウェアの活用事例を定期配信する
- 業界誌に広告を掲載して製品の認知度を高める
戦略と戦術の違いを簡単に比較
項目 | 戦略(Strategy) | 戦術(Tactic) |
定義 | 長期的な方向性を示す大枠の計画、資源配分 | 戦略を実現するための具体的な行動 |
目的 | 全体的なゴールに到達するための指針 | 現場で実行する具体的なアクション |
例 | 市場シェアを拡大するために中小企業に特化する | 特化のためのセミナー開催や広告出稿 |
戦略と戦術の重要度とリスク
戦略と戦術はどちらが重要か?
戦略が間違っている(弱い)と正しい方向に資源を投下できず、戦術が間違っている(弱い)と目的にたどり着かない。ではどちらが大切でしょうか。
正解は「戦略(Strategy)」になります。
それはなぜか。簡単な旅行を例に考えてみます。
現在地点である東京から、大阪のA地点に向かいたいと考えています。この場合正しい戦略とは西に向かうという事です。そして正しい(強い)戦術とは早く着く事ができる移動手段になります。この場合、戦術である移動手段は当然新幹線の方が優秀で、徒歩を選ぶより、確実に早く到着することができます。しかし、そもそも戦略として東に向かってしまっては目的地にたどり着きません。ましては東に向かって飛行機という戦術を使ってしまった場合は現在地点より、更に遠く移動してしまう事になります。現実的なビジネスではここまで極端な事は起こりにくいかもしれませんが、この事から戦術よりも戦略が重要であることが分かるかと思います。
戦略と戦術を混同した場合のリスク
以上の事例から、正しい戦略がある事が正しい戦術である以上に、目的達成には重要であることが分かります。つまり戦略の大きなミスは戦術ではカバーしきれないという事になります。また、戦略と戦術を混同すると、以下のようなリスクが発生すると考えられます。
全体像が見えなくなる
戦術に偏りすぎると、目標達成のための道筋が見えなくなります。例えば、「SNS広告を出そう」というアイデアが出ても、なぜその広告を出すのか、どのような効果を期待するのかが不明瞭になります。
方向性がブレる
戦略がないまま戦術を実行すると、異なる方向に力を分散してしまい、結局何も成果が上がらないという事態に陥りがちです。
時間と資源の無駄
戦術だけを追求してしまうと、重要でない活動に時間やコストを費やす可能性があります。
戦略と戦術をマーケティングで活用する方法
戦略:マーケティング活動の大枠を決める
マーケティング戦略は、**「どの市場で競争するか」「どの顧客層にアプローチするか」**といった大枠を決めます。これには以下のような要素が含まれます。
ターゲットの選定
市場調査を基に、理想的な顧客層を明確にします。
例:「従業員数50人以下の中小企業」
差別化ポイントの決定
競合との差別化要因を明確にします。
例:「導入サポートが手厚いソフトウェア」
戦術:戦略を実現するための施策を実行する
マーケティング戦術では、戦略を具現化するために「何を」「いつ」「どのように」実行するかを決めます。具体例としては以下のようなものがあります:
- SNSで製品の導入事例を定期的に配信する
- 業界イベントでのブース出展を通じて顧客と直接接触する
- メールマーケティングでターゲット顧客に定期的に情報を提供する
このように戦略と戦術を明確に分けることによって、効果的なマーケティング活動を行う事ができるようになります。
目的・目標・戦略・戦術の関係性
戦略と戦術を効果的に使うには、「目的」と「目標」も含めた全体像を理解することが重要です。
「目的」「目標」についての詳細はこちら
定義と役割
項目 | 定義 | 例(IT企業の場合) |
目的 | 事業活動の根本的な意義や方向性を示す | 中小企業のDX推進を支援する |
目標 | 測定可能で期限付きの具体的なゴール | 次年度までに契約企業数を20%増加させる |
戦略 | 目標を達成するための全体的な方向性や計画 | 中小企業経営者層をターゲットに認知を拡大する |
戦術 | 戦略を実行するための具体的な行動プラン | ウェビナー開催、広告出稿、SNS配信 |
関係性と流れ
目的・目標・戦略・戦術の関係は以下のように連鎖的に成り立っています。
- 目的を基に「目標」を設定する
- 目標を達成するために「戦略」を策定する
- 戦略を実現するために「戦術」を具体化する
具体例
例:中小企業のDX推進を支援し、効率的な経営を実現する
例:次年度末までに契約企業数を20%増加(100社→120社)
例:オンラインセミナーを軸に経営者層への認知を拡大
- 月2回のオンラインセミナー開催
- 業界誌に成功事例の広告掲載
- SNSで定期的にノウハウ配信
- メルマガでフォローアップ
このような目的から戦術までの正しい流れを把握することで、効果的かつ効率的な経営環境の構築がなされるようになります。
まとめ
「戦略」と「戦術」の違いを理解し、それを目的・目標と結びつけることができれば、経営やマーケティング活動がより効果的になります。重要なのは、常に「なぜその行動を取るのか?」という視点を持つことです。
戦略が明確であれば、戦術はその方向性に従って無駄なく実行できます。まずは自社の目的と目標を見直し、それに基づく戦略と戦術を整理するところから始めてみましょう!
弊社は最終的なゴールを自社での経理業務完結、「経理の内製化」とする会社を全面的にサポートします。今回ご紹介したような戦略・戦術の策定といった経営基盤の構築段階からのサポートも可能です。
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